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August , 2017
Sunday


役にたたない英語おせーたる(125)学生ローン

2016年4月30日(土)09時00分更新
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 パートナーの同僚の人生はdrama(劇的な出来事)に満ちている。ここでは仮にTom(トム)としよう。

 米国人は家庭のことをよく話す。日本人なら、身内の恥として人に言わないようなことも隠し立てしない。

 Tomはいつも冗談ばかり言っているので、「天真爛漫な人だな~」なんて思っていたのに、ところがどっこいである。

 パートナーの会社の集まりにお邪魔した際、Tomが家族の話を始めた。娘さんは大学生で、息子さんもいるという。

 ”What does he do?”(息子さんは何をしているんですか?)と聞くと、”He’s alcoholic, and he doesn’t work.”(アル中で働いてないんだ)。「あっちゃ~、マズいことを聞いてしまった」と思ったものの、本人は気にすることなく話を続ける。”His mother gave him a bad example. I’m responsible, too. I should have divorced her way earlier.”(母親が悪い手本になってしまったんだ。僕にも責任がある。もっと早く別れるべきだった)。元妻はdrug addict(薬物中毒)だったらしい。「ひょえ~、アメリカだ!」と思った。

 Tomがお金を出して、何度も息子をリハビリ施設に入れたらしいが、出てくるたびに元の木阿弥。それでも息子には彼女と子供がいて、家計は彼女が支えているという。だが、その彼女もex-convict(前科者)で普通の仕事には就けない。私の頭の中では「ひょえ~、ひょえ~」が連呼していた。

 パートナーによると、Tomは夜間大学に通って、MBA(Master of Business Administration、経営学修士)取得を目指しているという。”Wow, Tom is ambitious. Does he want to move up with MBA?”(へえ、トムって向上心があるんやね。MBA取って出世したいんかな?)と聞くと、パートナーから意外な答えが返ってきた。

 “No, he is getting a student loan by being an MBA student. His daughter is still in college, but for some reason, she is no longer qualified for scholarship or student loans, I don’t remember which. So, Tom is paying his daughter’s tuition fees with his student loan.”(違うよ、学生ローンを借りるためにMBAの学生してんだよ。娘さんがまだ大学生なんだけど、何らかの理由で奨学金だったか学生ローンが受けられなくなったんだってさ。どっちか忘れたけど。だから、トムが学生ローンを借りて、そこから娘の学費を捻出してるんだよ)。

 student loan(学生ローン)は大学に進学するためのローンで、政府系と民間のものがある。71%のundergraduate students(学部生)がstudent loanに頼っていて、卒業するころには、一人当たりの借金は平均3万5000ドル(約380万円)にふくれていると言われている。卒業後、安定したいい仕事に就ければ返せない額ではないかもしれないが、underemployment(能力以下の仕事に就くこと、正社員になれないこと)が一つの雇用形態となってしまっている今のご時勢、返済延滞が社会問題に発展している。金利が高いことに加え、student loanが恐ろしいのは、personal bankruptcy(自己破産)しても免責されない点だ。つまり、生きている限り、取り立ての手を逃れられない。おお怖っ。こうした社会的背景を受け、2016年の大統領選挙では、student loanの改善が候補者たちのうたい文句の一つとなっている。

 Tomも娘さんも同じ私立大学に通っている。州立でも学費が高いのに、私立だったらなおさらだろう。Tomはそれなりに稼ぎのいい人だが、学費を2人分負担するとなると・・・。

 ちなみに、MBAを取るためのbusiness school(ビジネススクール)は、law school(法学部)と肩を並べて学費が高い(卒業後、高収入が期待できるから)。

 普通なら、子供も手が離れて、自分の人生が楽しめる年代だろうに、dramaが絶えない人だな~と、他人事ながらに思うのでした。